地域のリアルな暮らしを、現地で暮らすひとたちに聞いてみたい──そんな想いから、地域おこし協力隊の皆さんに15の質問をさせてもらう企画。今回お話をうかがったのは、霧島連山の湧き水が湧く町として知られる、宮崎県小林市、芹川地区で暮らしている瀬尾絵美さんです。
Q1:自己紹介をお願いします
瀬尾絵美です。2013年9月に宮崎県小林市の地域おこし協力隊に着任しました。東京から移住して、子育てをしながら活動しています。
Q2:あなたが取り組んでいる活動を教えてください
子どもに食べさせたいカラダに優しいおやつ「emies」をスタート
地域おこし協力隊に着任してから1年目は、小林のPRを目的として地域の魅力あるものを集めて県外・市外のイベントに出店し、販売してきました。 小林市地域おこし協力隊の頭文字をとって「KCK Market 」という名前です。 せっかくなら自分の物をと、出店2回目からはお菓子を作って販売することを始めました。
食に関わる仕事がしたかったので調べていると、お菓子の製造許可を取っている加工場を見つけました。第1弾として、小林の柚子やブルーベリー・ハチミツなど、地元農産物を入れたマフィンを作ることにしました。
ブランドコンセプトは「子どもに食べさせたい体に優しいおやつ」。ブランド名は自分の名前から「emies(エミーズ)」と名付けました。自分が好きで、子どもたちに食べさせたいと思うものです。グラノーラとクッキー、スコーン、オーダーケーキなど焼き菓子を中心に、保育園児の歯がため用おやつも作って納品しています。「emies」の原材料は白砂糖・乳製品は使用せず、できる限りオーガニックで小林産・九州産の食材を選ぶよう心掛けています。母親の視点でできる活動をしていきたいですね。
イトオテルミーを習得中
そしてもうひとつの活動が、イトオテルミー療法の資格習得です。イトオテルミー療法は伊藤金逸医学博士が1929年に発明した、約80年の歴史を持つ民間療法のことをいいます。
生薬成分の入ったお香(テルミー線)を2本の器具(冷温器)に挿入し、火をつけて熱源とします。その器具で全身を摩擦することで身体の冷えた部分に効果的に熱を入れながら、血液やリンパの流れを促進し、自然治癒力を高める温熱刺激療法です。
わたしは産後、母乳が乳腺に詰まって炎症を起こす乳腺炎になり、そのときイトオテルミー(以下、テルミー)を施術してもらったら治ったんです。今では、わたしにとってテルミーは手放せない存在です。子どもの急な発熱や下痢、ケガなどにも「家庭の救急箱」になるテルミーは心強い存在です。テルミーがあってよかった!と何度思ったことでしょう。
テルミー療法は本来、病気になってから治すのではなく病気にならない身体にすることを考え、ひとの持つ自然治癒力を高めることによって病気を未然に防ぐことを目指しています。 おかげで家族はみんな、病院にあまり行きません。医療費はほぼタダ! テルミーを施術しながら親子でいろんな話をするから、コミュニケーションの道具としてもすごくいいものだなと魅かれたきっかけのひとつです。子どもが大きくなっても、家庭で使っていってほしい物です。
わたしが大切にしたいものを子どもたちに伝えていける、作れる強みになる資格でもあると思い、取得を希望し、現在隣町の助産院に通って勉強しています。副作用がないので赤ちゃんや妊婦さん、お年寄りまで誰にでも安心して受けることができますよ。なにより気持ちいいからおすすめです。
Q3:地域おこし協力隊をはじめたきっかけを教えてください
子育てのために移住。自然と共に生きる暮らしを求めて
わたしは東京で生まれ育ちました。都会で子育てをはじめて3年目、2011年に東日本大震災がありました。さらに福島第一原子力発電所の事故があり、それがきっかけで田舎暮らしを考え始めました。スーパーから食料がなくなる光景を前にして、お金はあるのに食べ物が買えない危機感を覚えました。2人目を妊娠していたし、のびのび子育てができるのか?と不安を感じました。
震災後に小林市と、隣町の綾町に数ヶ月トライアルで移住しました。移住したひとはみんながわたしの不安に共感してくれて、同じきっかけで移住したというひとにたくさん出会いました。「ああ、わたしは間違ってなかったんだな」と、嬉しかったのを覚えています。
移住した先輩たちの生活スタイルを見て、自分が楽しいと思える暮らしがしたいと思いました。自分で野菜を作り、旬の食材を食べる……という生活。つまり自然と共に生きる暮らしがしたいんだと感じたんです。 そう確信した頃、現在の自宅の向かいに住んでいる方が「ちょうど今、小林市の地域おこし協力隊を募集している」と教えてくださって、すぐに応募しました。
今までは、子どもを保育園に預けて、時間に追われながら働いて……お金と時間を軸に生きていたけど、宮崎の暮らしはそうではありません。春は種を撒いて芽吹き、秋には作物が実るという自然の循環の中にある暮らしです。わたしにとって、ここの暮らしを支えたり、発信したりする方に人生をかけたほうが楽しい。
引っ越すことで環境を変えることなど子どもに対する罪悪感はありましたが、実際、子どもたちの方が馴染むのが早かったと思います。それに子どもたちが自然と戯れている姿を見ると、よかったなぁと幸せがこみ上げてきます。 初めは、縁もゆかりもない土地に移住することに親は反対しましたが、今では家族も友達も宮崎まで遊びに来てくれています。わたしにとっては第二の故郷です。
Q4:あなたの「地域暮らしの魅力」を教えてください
自然が暮らしを豊かにする
その土地に来てみないと、地域の真の魅力は分からないと思いますが……挙げるならば空気や水、星空、そしてひとかなあ。
東京ではミネラルウォーターを買ったり、浄水器を付けたりしていたけれど、小林は湧き水がそのまま水道から出てくるんです。湧き水でできた自然のプールがあるくらい、水に恵まれた町です。小林のひとが東京の普通の暮らしを見たらびっくりするだろうと思うくらい、わたしはここの自然豊かな暮らしにびっくりしました。東京ではどんなにがんばっても味わえなかったことが魅力です。
Q5:心に残る出来事を教えてください
地域のひとと信頼を築く「のんかた」
田舎に来て大変なことは、その地域に馴染んでいくことです。どの地域にも集落・地区があって、移住すれば自分が入る地区の方々と付き合っていくことになります。
小林では、飲み会のことを「飲ん方(のんかた)」といいます。いわゆる家飲みの形態が多いです。 うちの地区ではよくのんかたを開催してくれる方がいて、移住者が集まったり地元のひとが集まったり、みんな一緒になってワイワイ騒ぎます。ご近所さんで集まって共にお酒を飲むことで普段なかなか話せないことでも話せちゃう、仲良くなれるコミュニケーションの場です。
今まで飲み会っていうと友達同士や、会社の同僚と集まることが多かったんですけど、こっちの「のんかた」は地域の若いひとたちからご高齢の方までが一緒になってご飯を食べてお酒を飲む。幅広い年代のひとが集まります。こういうのってなかなかないことだと思います。いろんな世代の方々とコミュニケーションがとれるから楽しいし、地元に溶け込みやすくなる大切な場だと思っています。
Q6:好きな地域のご飯を教えてください
焼いてお醤油を。原木椎茸がおいしい
小林の原木椎茸がおいしくて、びっくりしました。手のひらにあまるくらい、おっきいんですよ。焼いてお醤油をかけるのが、シンプルですが一番おいしい食べ方です。あと、はまだの餃子ですね。西小林にある唯一のスーパー「はまだストアー」の餃子がすごくおいしいです。
Q7:日々の生活で大変なことを教えてください
家の管理は手伝ってもらうことも
田舎暮らしは家の管理も大変です。わたしの家は空き家バンクの賃貸物件なのですが、古民家で庭も広く、定期的に広い庭の草刈りをしなければすごいことになります(笑)。それを見かねてご近所の方がお手伝いしてくれたりして、はじめは申し訳なくて頑張らなきゃと力んでいたけど、1人だと限界があるし、十分に力仕事ができないこともあります。そういうときには、思い切ってお願いしよう、と思うようになりました。
地域おこし協力隊なのだからと1人で抱え込まず、甘え上手になることも大切かもしれないなあと。地域の方が好意で手伝ってくれたら、他に自分ができることでお返しすればいいんだと思えれば、もっと田舎暮らしを楽しめます。
Q8:ウェブでは知ることができない地域の情報は?
子どもたちが輝いている!
道ですれ違うと、なんと子どもたちの方から挨拶をしてくれるんです。当たり前のことかもしれませんが、今までそのような環境にいなかったのでびっくりしました。
それに道路で横断歩道を渡る子どもたちは、渡り終わると車に向かってお辞儀するんです。「挨拶」という基本的なことを自然にできる子どもたち。大人が、見習わなきゃと思わされる瞬間です。小林の子どもたちは、とっても輝いて見えますね。
Q9:あなたが考える地域の課題を教えてください
空き家の登録数が不足していること
現在、空き家の増加が全国的に社会問題となっていますが、建物が管理されない状態で長期間放置されてしまうと、老朽化・倒壊の危険性などの問題を引き起こしてしまいます。有効活用するための「空き家バンク制度」は小林にもありますが、まだまだ登録数が少ないのです。
わたしの家も空き家バンクの賃貸物件でした。まさに田舎暮らしをダイレクトに感じられる古民家です。不動産屋さんの物件とは違い、住める状態にするために掃除や改修をしないといけないから、初めは大変。でも、自分仕様に直す楽しみを思ったら苦になりませんでした。
物件の選択肢が多ければ移住促進にもなりますよね。「空き家バンク制度」への登録数を増やしたくても、空き家を探すのは大変です。口コミ・人伝えでもなかなか情報が集まらないのが現状です。空き家バンク制度を知らない方もいらっしゃると思うので、いろいろなところで話題にしながら、今後少しでも登録数が増えていけばと思っています。
これからは移住希望者の支援も少しずつしていきたいです。もし小林に下見にいらっしゃったら、今度は移住者を迎える側として、自分がしてもらって嬉しかったこと、助かったことをして、精いっぱい力になりたい。そんなことを考えています。
Q10:町のおもしろいひとを教えてください
- 「しまじい(愛称)」こと、嶋岡豪士さん
EM(通称:EM菌*1)を使った石鹸を作って販売したり、有機野菜作りの家庭菜園講座などを定期的に開催したりしています。 しまじいはとにかくよく喋る! 特にEMのことには熱くて、初めて会ったときからそのことしか話さないくらい熱くて(笑)。だから本業を知らなかったんですが、 じつは昔、牛の受精士さんだったそうです。そんな職業があるっていうことにもほんとに驚きました。
しまじいは西諸弁(にしもろべん)で声が大きいから、家に来てガーッて喋って帰ると、まるで嵐が過ぎ去ったような感覚(笑)。でも勉強熱心だし、すごくいいひとです。小さくてかわいいおじいちゃんというか。だから愛称も付いちゃうんでしょうね。 いつもいろいろな情報を教えてくれて、移住者をあたたかく受け入れ、応援してくれています。
*1:EM菌:Effective(有用)Microorganisms(微生物群)の略語。”共存共栄する有用な微生物の集まり”という意味で広く使われる。
Q11:同世代でおもしろいひとはいますか?
- 下湯 美鳥(しもゆ みどり)さん
野尻にある、わたしが一番好きな天然酵母のてづくりパン屋さん「丘の上のパン工房Verde」の下湯美鳥さんです下湯さんは3児の母であるにも関わらず、週4日の営業の他に休みの日もイベント出店から納品までこなす、尊敬している方です。
おもしろいのは下湯ファミリーで、大学生になる娘さんと、高校生のおふたりのお子さんと、先日ソーセージ作りをご一緒させてもらったのですが、4人の会話がおもしろくて。まるでコントみたいにボケとツッコミ、オチが自然にできあがっていくのです。うちの子どもたちもまるでテレビを見ているように圧倒されていました(笑)。
親子でこんな風に笑いながら楽しくご飯を作れたら、それだけで子どもにとって素晴らしい食育になっていると思います。育児もパン作りも、大先輩の下湯さん。これからもいろいろアドバイスいただきながら、わたしも下湯ファミリーのような明るい家庭を作っていきたいです。
Q12:尊敬している町のひとを教えてください
- 中里(なかざと)みきさん
移住の先輩の中里みきさんです。2012年に東京から移住し、現在は住んでいる西小林の「にっこばまちづくり協議会」の事務局を運営されたり、小林の新鮮な野菜を定期発送したりしています。
中里さんの家は「北きりしま移住支援センターみき*ハウス」として移住支援のシェアハウスとしても場を提供しているのですが、移住を考える方が滞在中に少しでも宿泊費負担が軽くなるように、とシェアハウスを立ち上げたそうです。
わたしが協力隊に応募したのも中里さんの一声がかかったから。そして小林に来て1年間、家が見つかるまでシェアハウスでお世話になっていました。 何も分からない都会から来たひとが、ご近所の輪に入っていくのって、やっぱり大変なことです。わたしが小林にスムーズに溶け込むことができたのは、中里さんがいろんなひとを紹介してくれたからだと思っています。ここまでベースを築いてくれた中里さんを尊敬しますし、本当に感謝しています。現在のわたしの家は中里さんの向かいにあるので、夜でもたまに「のんかた」していますよ。
Q13:注目している地域おこし協力隊を教えてください
- 細川 慎太さん(小林地区)、細川 絵美さん(野尻地区)ご夫妻
ご夫婦で小林市の協力隊なんです。すごく珍しいパターンですよね。 おふたりはウェブメディア「繋ぎ屋-命を繋ぐ物語-」や紙の媒体などのさまざまな手段で、小林の情報発信をしています。
将来はゲストハウスやカフェなどをやりたいそうで、若くてエネルギーがあって、キラキラしているんです。地域おこし活動をしていく上で、ひとりだとなかなか難しいことが多いです。だからふたりで支え合っているなんて、すごく羨ましいし、だからこそ期待大です!
Q14:任期後の進路を教えてください
「emies(エミーズ)」とイトオテルミーの2本柱で仕事を作る
これからは「emies(エミーズ)」とイトオテルミーの2本柱で仕事を作って、「食と健康」をテーマに定住を図りたいと思っています。
地域おこし協力隊の任期が終わるまでに、イトオテルミー療術師の資格を取り、いろんなところで施術ができるようになることが理想です。お菓子づくりに関しては、春に自宅に加工場が完成する予定です。 現在、子どもは学校を終えたら学童に通っていて、もう少し子どもが大きくなったときに、子どもが帰ってきても家に母親がいられるような働き方をしたい。
「子育てと仕事を両立する」というのが理想です。少しずつですが形になってきているかな。時間の使い方が自由にできる仕事を作っていけたらと思っています。
Q15:これから地域おこし協力隊へ応募しようと思っているひとへのアドバイスをお願いします
年齢に関係なく話しかけること、挨拶することを忘れないで
地域おこし協力隊の最終目標は定住だと思うので、いかに地域に入っていくかということが、すべての方に当てはまる大切なことです。実際に地域に住んでみると、定住するって難しいんだなと実感することがたくさんあると思いますが、それでも地域おこし協力隊だからこそ得られるメリットのほうが大きいです。人脈が広がったり、その地域を地元のひとよりも深く見ることができたり……。
だから地域で暮らし始めたら、いろんなひとと話して自分を知ってもらうことが大事ですかね。年齢に関係なく話しかけること、挨拶することを忘れないようにすると、さらに楽しくなると思います。
(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
お話をうかがったひと
瀬尾 絵美(せお えみ)
1980年東京生まれ東京育ち。子どもを自然の中で思いっきり遊ばせたい!という想いで小林市に移住しました。住むとなったら田舎暮らしを思いっきり楽しもう!と、畑をしたり薪ストーブ導入も計画中。好きを仕事にできる可能性を最大限に生かせる地域おこし協力隊制度を成功させるべく、お菓子作りとテルミーに奔走中&日々子育てに奮闘中。
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